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2015年6月10日 (水)

アートペッパーの楽器

 私は,概ね,ジャズを始めた頃から,アートペッパーファンです.

 ちょうどその頃リリースされたレコードは,The Tripです.あちらこちらで喋っていますが,このThe tripは私のバイブルとも言うべきアルバムなのです.だからといって,結果的に演奏スタイルが似ているというわけでは決してありませんが.

 このThe tripが発売されたのが1977年,その前年1976年にLiving Legendが,1978年にNo Limitが,そしてその次にAmong friendsが発売されました.また1978年にはLive at Village Vanguardがリリースされたかと思います.Living Legend, The tripおよびNo limitの3作は1970年代の新しいアートペッパースタイルを代表する作品で,Among Friendsは1950年代に回帰する様なスタイルでした.その後,亡くなる1984年まで,スタヂオ,ライブを含めて,実に多数のアルバムがリリースされました.これらアルバムの演奏スタイルは,新しいスタイルの枠の中に,1950年代の記述が垣間見えると言うようなものだったでしょうか.

 私は,この中でやはり,The tripとLiving Legendがベストで,更に1枚に絞ればLiving Legendが最高の1枚だと思っています.

 この頃はジャズやジャズメンに関する情報はほとんど全て,スイングジャーナル誌と購入レコードのライナーノーツがソースで,アートペッパーに関するニュースや各種基礎的データーもこれらから得ていました.その頃のアートペッパーにはいつもローリーが付き添っていました.彼女は当時の奥様で,マネージャー役を含めて,彼に関する全ての管理をしていたかと思います.

 スイングジャーナル試でみるArtの写真にはいつもLaurieが写っていました.また,この頃のアルバムの写真にもLaurieが写っていました.

 そんなLaurieと先日,メールのやりとりをする機会があり,1970-1980年代のArt Pepperの使用楽器についてうかがうことができました.彼女は実に詳しく把握されていています. 私は,1970年代はSelmer Mk7と以前から,どこかで聞いて信じていましたが,ネットで検索してみると,Selmer Mk7とMk6を含めた諸説が語られています.

 さて,Laurieさんの説明は次のとおりです.

Art Pepper's Saxophones:

BUFFET 21796, 1975-1976
Living Legend (Contemporary)
The Trip (Contemporary
)

SELMER MARK VII 247060, 1976-1979
No Limit (Contemporary)
So In Love (Artist's House)
Among Friends (Trio)
Art Pepper Live at the Village Vanguard (Contemporary) Art Pepper Today (Galaxy)
Straight Life (Galaxy)
Landscape (Galaxy)
Besame Mucho

SELMER MARK VI 109410, 1980-1981
One September Afternoon (Galaxy)
Winter Moon (Galaxy)
Roadgame (Galaxy)
(all Maiden Voyage Recordings - Galaxy)
With Duke Jordan Various
Unreleased Art: Vol I Abashiri WT
Unreleased Art: Vol III Croydon WT
Unreleased Art: Vol V: Stuttgart WT
Ronnie Scott 4 disc set Vol VI WT
Unreleased Art: Vol VII Osaka WT
About half of the Atlas sessions / Various including the two with Sonny Stitt.
Art at Fat Tuesday’s
Neon Art 3 Discs (Omnivore)

SELMER MARK VII TENOR 263731
Art Pepper Live at the Village Vanguard (Contemporary)
Atlas Blues "Blow & Ballade" (Atlas)

 実に明快です.

 なんと,私が最も好きな2枚のアルバムはBuffetなのです.

 時代的に,Super Dina-actionというモデルかと思います.この楽器は,録音をするとなかなかいい音がするのを私は感づいていました.Art PepperはこのころBuffetと契約をしていたようですので,彼の好みにかかわらず,これを使うことが余儀なくされていたのかと思います.

 さて,次のNo LimitやLive at Village VanguardからはSelmer Mk7です.確かにこの頃は,Art Pepperの気力が非常に充実しているらしく,力が入った演奏が多く,音質もやや荒々しいアバンギャルドな印象です.その後,最晩年にはMk6(S/N 10****)になりますがこの時代は,やや落ち着いた印象の演奏になっています.楽器の性格とも併せて納得です.

 楽器の選択は,何を手がかりにしていいのかよく分かりません.いずれにしても大部分のリスナーは気づかない程度の違いかと思いますが,演奏する本人にとっての操作性,音色,リスナー側からの音色等,考え感じることは色々あります.Art Pepper自身は最後に選んだMk6が良いと思っていたのでしょうね.
 

 Artpepperimg_6337

 写真は,これもLaurieが送って下さったもので,ArtがMk6を抱えています.

 蛇足ですが,私は,もっぱら,Artが1950年代の数々の名作を録音したThe Martinです.

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コメント

お久しぶりです。四年ほど前に亀和田さんのライブを見せて頂きました山形です。この記事にとても興味を惹かれました。
アートペッパーがマーク6を使っていたというのは知りませんでした。
マーク7を使っていた時期というのは案外短かったのですね。
久しぶりにアートペッパーのライブ盤ベサメムーチョを聴きました。収録されているいそしぎがペッパーのバラードでは一番好きかもしれません。
個人的にはリードをどれくらいの硬さのものを使われていたのか気になりました笑。

投稿: 山形 | 2015年7月28日 (火) 20時15分

山形さん,お元気ですか.
演奏の調子はいかがですか.
そうですね,私も彼がMrk6を使っていたとは,意外でした.
アートが,「今はセルマーも手に入れた.」との趣旨の発言をしていた記憶もありますので,いずれにしても,セルマーを持ちたいという欲求があったのでしょうね.
機会がありましたら,ローリーさんにリードの件も訊ねてみましょう.

投稿: カメサダ | 2015年7月29日 (水) 07時35分

お返事ありがとうございます。元気に暮らしていますが、仕事を始めて演奏する機会はぐっと減ってしまいました。やはり毎日の様に楽器に触ってないといけませんね…。
あの時代の人にとって(今でもそうかもしれませんが)セルマーは憧れの楽器だったのですね。あるサックス奏者に『アメセルは高いって言うけど昔も高価な楽器だったよ』といわれたことがあります。クランポンは吹いたことありませんが機会があれば一度吹いてみたいものです。
亀和田さんの演奏も時間を作ってもう一度聞きに行きたいです。

投稿: やまがた | 2015年7月29日 (水) 21時23分

アート・ペッパーの貴重な記事、懐かしい気持ちで拝読しました。当時のことが蘇ってきてうれしかった。私は、演奏家ではありませんが、ジャズ・ファンとしてライヴ会場に足を運んでいました。今年(2019年)10月25日から30日まで、6日間だけですが、仙台メディアテーク5階展示室で「資料で探る仙台と日本のジャズ史」を開催する予定です。1970年~1989年頃にかけて仙台のライブ会場に足を運んでいた頃のポスター、パンフレット、フライヤー、入場券半券、写真、ジャズ喫茶マッチ箱、サインなどの資料も展示する予定です。アート・ペッパー仙台公演ゆかりの品も展示いたします。お時間がありましたらお出かけください。岡本

投稿: 岡本勝壽 | 2019年7月 9日 (火) 04時30分

岡本様,コメントありがとうございます.素晴らしい企画ですね.やや距離がありますので,行けるかどうかわかりませんが,うかがってみたいですね,,,

投稿: カメサダ | 2019年7月11日 (木) 07時50分

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